どんな本?
専門用語なしでやさしく語られる経済の本
難しい用語や専門的な知識が出てくるイメージの「経済」ですが、本書は専門用語なしで身近な経済の疑問にやさしく教えてくれます。
しかも、経済学者などが語る教科書的な正解に対して、「でもそれって本当だろうか?」と疑問を呈し、専門用語で隠され見えにくくなってしまった本当の答えを教えてくれます。
お金の裏に隠された経済の本質
経済の話に対してとっつきにくく感じている人は多いかもしれませんが、経済とは私たち一人一人や家族、今を生きるのに必要な生活基盤や技術などを作り上げてくれた昔の人々、日本の物を買ってくれる外国の人々など、「人」が主役なのです。「お金」や「物価」、「株価」、「GDP」などの数字にとらわれて、人と人とのつながりが見えなくなってしまっているから「経済」が自分には関係ない難しいものに感じるのです。
経済はお金でなく「人」が主役
本書を読むと、「経済って難しいお金の話じゃない、私たち『人』の話なんだ」ということに気付かされます。本のタイトルの通り『お金の向こうに人がいる』ということを意識すると、経済の本当の姿が見えてきます。それは、専門用語や経済の教科書的な知識を通しては得られない答えです。
本書を手にとったきっかけ
年金問題や投資について見直す
今、少子高齢化による年金問題を心配している人も多いのではないでしょうか。老後がなんとなく不安・老後に向けて貯蓄をしよう・投資をしようと思っている人が増えていると思います。
私も幼い子供がいるので、教育資金を貯めながら、自分の老後に対しても少し積立投資をしています。
そんな中、本書の最終話では、
- 未来のためにお金を増やす意味はあるのか?
- 老後の不安を解消する方法は?
という疑問を解き明かします。
それが、私がこの本を手に取ったきっかけです。
- 老後のために投資してお金を増やそうとするのは「正解」じゃないの?
- 経済や投資のことは勉強してきたつもりだったけれど、自分に何か見えていないことがあるのでは?
- 自分はお金のことを盲信している?
書店でこの本を手に取った時、そんな疑問が頭に浮かびました。専門用語だけでは分かったと言えない経済のこと、お金を増やすことに本当に意味はあるのか、この本を読んで改めて考え直すことができました。
NISAをきっかけに投資ブームがはじまっているといってもいいでしょう。世間は投資で何を買えばいいか、どれだけお金を増やす必要があるかなどの情報が溢れています。多くの人がお金を増やすために突き進んでいこうとする中で、こういった原点に立ち返る本は貴重です。
本書のおすすめポイント
お金や経済の10の疑問に答える
本書では第1話〜第10話で経済の「なぜ?」に答え、最終話『未来のために、お金を増やす意味はあるのか?』、おわりに『「僕たちの輪」はどうすれば広がるのか?』で締められています。
経済関係の書籍で、最後に「人と人とのつながり」に帰結する本はめずらしいのではないかと思います。経済のことは専門家が考えればいいのではなく、一人一人が考えていく必要があるのだという筆者の想いが伝わってきます。
以下は本書で解き明かされる10の疑問です。
お金のむこうに人がいる/田内学
- 第1話 なぜ、紙幣をコピーしてはいけないのか?
- 第2話 なぜ、家の外ではお金を使うのか?
- 第3話 価格があるのに、価値がないものは何か?
- 第4話 お金が偉いのか、働く人が偉いのか?
- 第5話 預金が多い国がお金持ちとは言えないのはなぜか?
- 第6話 投資とギャンブルは何が違うのか?
- 第7話 経済が成長しないと生活は苦しくなるのか?
- 第8話 貿易黒字でも、生活が豊かにならないのはなぜか?
- 第9話 お金を印刷し過ぎるから、モノの価格が上がるのだろうか?
- 第10話 なぜ、大量に借金しても潰れない国があるのか?
- 最終話 未来のために、お金を増やす意味はあるのか?
- おわりに 「僕たちの輪」はどうすれば広がるのか?
みなさんにも思い当たる疑問が多いのではないでしょうか。
私は経済の基礎知識を学んでいて投資もしているので、経済のことを少しは分かっているつもりでいましたが、この本を読んで、根本的なことは分かっていなかったんだなと気付かされました。
例えば、
- 『経済が成長しないと生活が苦しくなるのか?』
- 『なぜ、大量に借金しても潰れない国があるのか?』
といった疑問に対して、
- 日本はあまり経済成長していないし、少子化や物価上昇でこれからも厳しいので、将来のためにお金をしっかり貯めて投資して増やさないと、生活が苦しくなる。
- 日本は大きな借金を抱えていて、このままじゃ大変なことになる。
なんとなくかじったニュースや本の知識から漠然とそんなふうに考えていましたが、本書を読んで「根本的にはそうではないんだ」と気付かされました。
3択の問題を解きながら読み進められる
本書では、14の問題が出題され、ABCの3択の中から答えを考える形式で進んでいきます。
例えば以下のような問題です。
QUESTION8 値上がりしそうな会社の株を10万円で購入した。その10万円は、主に、どこに流れるだろうか?
A その会社の設備の購入や従業員の給料
B その会社が銀行から借りているお金の返済
C その会社とはまったく関係ない人々の生活
お金のむこうに人がいる/田内学
QUESTION10 次のうち、政府が集めた税金で解決できる問題はどれだろうか?
A 貧困問題
B 年金間題
C 政府の借金の問題
お金のむこうに人がいる/田内学
みなさんは、正解が分かりましたか?
どの問題も一見簡単そうなんですが、どれが正解か分からない、またはどれも正解のように思えて、うーんと考えさせられます。自分で考えるプロセスを踏めるので、理解を深めるのにも役立ちます。
ぜひ本書を読んで、問題の答えを知り、経済に対する疑問を解き明かしてみてください。
こんな人におすすめ
以下のような人は、ぜひ本書を読んでみることをおすすめします。
- 経済のことを難しい用語なしで一から知りたい。(お金とは?働くとは?)
- 身近な経済問題について本当のことを知りたい。(年金や日本の借金、投資など)
- 社会を循環するお金の流れがどうなっているのか知りたい。(政府・企業・家計、また日本・外国でどうお金が流れていくのか)
- お金は増えるのか?増やすことに意味があるのか?について知りたい。
- 「お金のことを過信するあまり大切なものを見失っていないか」に立ち返りたい。
一番は、
経済って難しいと思ってたけど、本当は優しい学問なの?
と気になった人にぜひおすすめします。
この本をたくさんの人が読んで、「人と人との繋がり」や、「僕たちの輪」が広がる社会になったらいいなと思います。ぜひ読んでみてください!