投資ってした方がいいの?
まず、誰もが心配するのは投資って危なくないの?ということではないでしょうか。または、難しそうで自分には無理と思う人も多いかもしれません。減るかもしれないなら投資はやりたくないと思うのも当然です。どうして投資をした方がいいのか、投資をするならどんな投資をした方がいいのかということを解説していきたいと思います。
投資はリスクを伴うので、最低限の知識をしっかり学んで自己責任の上で実践できるようにしておきましょう。
物価上昇(インフレ)に備えられる
投資はもちろんリスクがあり、投資した資金が減る可能性があります。しかし、銀行預金だけだと物価上昇(インフレ)により、預金の資産価値が減ってしまう可能性があります。現在の日本の普通預金の金利の多くは0.001%程度、定期預金の金利は高くても0.2%程度です。これではほとんどお金は増えません。日本は長らく物価の低いデフレの状況にありましたが、様々な要因により2023年の日本のインフレ率は約3%にもなりました。これからはインフレに備える必要性が出てきているのではないでしょうか。
預金の価値が減少するとは?
物価が上がると同じ金額で買えるものが少なくなります。これは実質お金の価値が下がってしまうということです。
例えば、食料品・ガソリン代・電気代などが値上がりすると、同じ生活をしていても生活費が高くなりますよね。例えば、月20万円で生活できていたのに、物価上昇により月25万円ないと生活できなくなったとします。もし100万円預金していたら、生活費の5ヶ月分にあたる預金が4ヶ月分に減ったということになります。
家計を見直すきっかけになる
投資はリスクがつきもの。投資した資産がマイナスになった時も慌てないよう、しっかり貯金をしたり、しばらく使わないお金で投資したりと、家計に余裕を持たせることが大切になってきます。
投資をする前に下記のようなことをチェックしてみましょう。
- 今いくら貯金があるか
- 目標となる貯金が着実にできているか
- これから先必要になりそうなお金はいくらか
- 投資に回すお金を確保するために、節約できる部分はないか
意外とこれらのことを具体的に把握する機会は少ないのではないでしょうか。
このように投資は今と将来の家計をしっかり把握する良い機会になります。
どんな投資をしたらいいの?
人それぞれ収入や貯金、家族構成や性格などが違い、取れるリスクも違ってくるので、投資には誰にでも当てはまる「正解」というものはありません。ただ、多くの方が投資の入り口として知っていて損のない投資方法があります。
長期投資でコツコツ増やす
それが、じっくり長い時間をかけて行う投資信託を利用した積立投資です。もちろんリスクもありますが、生活に支障のない範囲の少額からコツコツと長い目で見て投資することで、リスクを低く抑えながらお金を増やしていくことができます。長い時間をかけることで、多くのメリットが得られます。ぜひこの機会にしっかり学んでおきましょう。
- 少額から無理のない範囲で始められる
- コツコツゆっくりと資産を築ける
- 短期投資に比べてリスクを低く抑えられる
- 相場に振り回されず手間やストレスが少ない
リスクの高い短期投資
リスクの高い投資についても知っておきましょう。短期的な価格変動を予測して大きな利益を出そうとする短期投資は、ギャンブルに近い「投機」と呼ばれます。とてもリスクが高く、損失が出た場合のダメージも大きくなります。
一方、長期的な資産価値の成長によって利益を得ようとするのが長期投資です。
短期投資は、予想が当たれば資金を何倍にも増やせる可能性がありますが、資金を失う可能性も大きく、むしろ失敗する人の方が多いのが現実です。
一攫千金的を夢を見ず、先ほど述べたコツコツと資産を増やす長期投資をしたほうが確実です。
長期投資の基礎知識
それでは、長期投資をする上で知っておきたい基礎知識を解説していきます。
ポイントは以下の通りです。
- NISAとは
- 投資信託とは
- 長期投資
- 分散投資
- 積立投資
- 複利の効果
- いくら投資するか
- 資産が減るリスク
NISAとは
NISAとは、日本の少額投資非課税制度のことで、NISA口座で購入した投資信託や株の利益は非課税になります。通常、投資の利益は約20%課税されますので、とてもお得な制度です。
2024年からは新NISAが始まり、一生涯1800万円(年間上限360万円)まで非課税で投資できるようになりました。投資をするなら必ずNISA口座を開いておきましょう。
口座開設におすすめなのは、SBI証券や楽天証券などのネット証券です。スマホで口座開設が完結でき、その後の運用もスマホのアプリでできるので便利です。手数料の安さや選べる投資先の豊富さ、クレジットカードによる積立やポイントがつくといったサービスが充実しています。
NISAで推奨されている投資とは
長期・分散・積立投資です。20〜30年くらいの長期間、投資信託で市場全体に分散投資しながら、一定金額を自動で積立投資します。
- 経済は長い目で見ると右肩上がりに成長していく
- 投資信託を利用して市場全体に幅広く分散
- 積立投資で安い時に多く買う
- 複利の力で利益が利益を生み出す
長期投資のメリットの一つは、短期的な資産のプラスマイナスに一喜一憂しなくて済むということです。相場は上がったり下がったりしながらも、長期的には経済は右肩上がりに成長すると予測されます。
成長する会社や国、価格の上がる資産などを予想せずに、日本全体や世界全体などのインデックス投資信託を購入し、市場全体に幅広く分散投資します。分散することでリスクを下げつつ、特定の資産の成長を取り逃がすことなく投資できます。
一定金額の積立投資では、自動的に価格が安い時には多く買い、高い時には少なく買うことになるため、購入単価が下がっていきます。
また長期投資では、長期的な価格の上昇だけでなく、複利の効果も資産の成長を助けてくれます。複利は利益を再投資することで、利益が利益を生み出し資産がどんどん増えていく仕組みです。
このように長期・積立・分散投資では、手間やストレスの少ない方法で、リスクを抑え、時間をかけて資産を成長させていくことができます。
投資信託とは?
投資信託とは、自ら株などを買うのではなく、投資信託会社に資金を預けて代わりに投資してもらい、その収益を分配してもらう仕組みです。投資信託は、株式や債券、不動産、金など様々な種類があり、これらを組み合わせたものもあります。
ファンドとも言い、株式ファンドや債券ファンド、後述するインデックスファンドといった使われ方をします。具体的な投資信託の商品名を示す時によく使われるイメージです。
自分で複数の投資先に分散投資しようと思ったら、ある程度まとまった資金が必要になるし、手間もかかります。また分散先が少なければリスクも高くなります。少ない資金から幅広い国・銘柄に広く分散して投資できるところが、投資信託の最大のメリットと言えます。
実際にどれくらい分散投資できる?
例えば、全世界株ファンドは、日本を含む先進国から新興国まで47か国3,000銘柄もの株で構成されます。(eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)参照)
日本株ファンドでは、有名な指標である日経平均株価の225銘柄や、TOPIXの2,160銘柄(2023年4月時点)に投資することができます。
インデックスファンドとは?
投資信託はインデックスとアクティブの2種類に分かれます。インデックスファンドは市場全体の平均を目指すのに対し、アクティブファンドは市場平均を上回る成績を目指します。しかし、アクティブファンドの約8割が、インデックスファンドよりも成績が悪いというデータがあります。
その要因の一つとして、アクティブファンドは手数料が高いということがあります。良い成績を目指すために、市場や企業の調査・分析をして選定するためのコストがかかるからです。
プロがいい成績を目指しても、市場全体の平均に勝てないのであれば、素人の私たちが投資先を選んで利益を出すのは相当難しいことが分かりますよね。
長期投資
相場の変動に影響されず、安定した成績を得るためには、長期投資が重要です。15年以上の長期投資を行うと、過去のデータから考えて、運用成績がマイナスになることはまれであることが示されています。不況が来ても長期的に見れば復活し、成長していく傾向があるため、長期投資によってリスクを軽減することができます。
タイミングを測って投資するのは難しい
相場を予想して投資のタイミングを測ることは失敗のもとです。未来のことは誰にも分かりませんし、たまたま当たったとしても、当て続けることは不可能です。大災害やコロナショックなど、誰にも予想できないような原因で株価が下落することはよくあります。
タイミングを測ろうとすると、買った後ですぐ下落してしまった、下がった時に買おうと待っていたらその後どんどん上がり乗り遅れてしまったなどはあるあるです。
タイミングを逃さない長期投資
それではどうしたら良いのかというと、タイミングを測らずに15年以上の長期で投資し続けるのです。相場は上がったり下がったりしながらも、長期的にみるとどんどん上がっていきます。
過去を見るとだいたい10年に1回くらいの頻度で何かしらの理由で不況が訪れています。将来も過去と同じようになるとは限りませんが、15年以上の長期で見れば、不況になっても復活してまた伸びていくだろうということは、一定の信頼ができるのではないでしょうか。
長期的に使わないお金を投資する
逆に5年・10年の期間だと、その間好景気が続けばいいですが、ちょうど不況になってしまえば、大きな損失を抱えたまま売却せざるを得ません。
ここで大切になるのが、長期的に使わないお金を投資するということです。途中で不況が来ても投資しているお金を使わなくて済むのであれば、景気が回復するまで待てばいいので、損失を避けることができます。
15年以上の長期で使わないお金を投資するようにしましょう。
分散投資
「卵を一つのカゴに盛るな」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。何が起こるか予想することの難しい投資の世界で、一つの投資先に集中することは、かなりリスクの高いことです。例えば1社の株を持っていて、その会社が倒産してしまうと資金を丸ごと失ってしまうことになります。
世の中には多数の国・会社が存在していて、資産の種類も株・債券・金・不動産などさまざまです。このうち何が上がるかは完全に予想はできません。それぞれの国や会社、資産がもつリスクというのも様々です。
投資先を複数の資産、時間、地域に分散することでリスクを分散させることができます。
資産の分散
資産の分散では株、債券、不動産、金などの組み合わせが重要です。おおまかに株は高リスク高リターン、債券は低リスク低リターンの資産と言えます。また株と債券は、株価が上がると債券の価格が下がる、株価が下がると債券の価格が上がるというように、逆の動きをする関係にあります。2つを組み合わせると資産全体の価格変動が緩やかになります。リスクも下がりますが、株だけに投資するよりもリターンは少なくなります。
よく株と債券の比率の目安にされるのが、「100-自分の年例」を株の割合にするというものです。例えば20歳なら100-20で80%を株、20%を債券という割合になります。
地域の分散
さらに、地域の分散も重要であり、日本、先進国、新興国などに投資することで、リスクを抑えながらリターンを得ることができます。
日本は為替変動のリスクがない一方で、近年では低成長となっていて、アメリカなどと比べると大きなリターンを得られません。現在世界経済を引っ張っているのはアメリカですから、アメリカを含む株を持っておくと資産の大きな成長が見込めます。新興国はリスクが高いものの、これから大きく成長する可能性が期待できます。
全世界株式の投資信託を利用すると、これらにバランス良く投資することができます。
全世界株式の投資信託では、だいたい米国60%、日本5%、その他先進国25%、新興国10%という割合になっています。
積立投資
時間の分散
積立投資は、投資するタイミングの分散(時間分散)になります。
毎月など一定期間ごとに投資します。そうすると、相場を予想しなくてもタイミングがバラけて購入価格が平均的になっていきます。
また外国の資産に投資する場合、為替(円高・円安)の影響も受けます。これも、投資のタイミングを分散させることで平均的になっていきます。
ドルコスト平均法
また、積み立てる際一定の金額(円)に決めておくと、割高のときには少なく、割安のときには多く買えるため、結果的に購入単価が下がっていきます。これを「ドルコスト平均法」と言います。
これからお金を貯めていくという人は、毎月の収入の中から例えば1万円積立すると決めて長期でコツコツ続けるのがベストです。
すでにまとまった貯金があるという人は、それを一度に投資するのではなく、何回かに分けることも考えてみましょう。例えば100万円を月に10万円ずつ10回に分けてみるなどです。
複利の効果
複利の効果は、元本に利益をプラスして再投資することで、長期間運用するほど元本が膨らみ利益も増えていくことです。再投資することで元本と利益がどんどん増え、長く運用するほど増え幅が大きくなります。利益が利益を生む仕組みと言えます。
複利と単利
複利に対して単利というのは、元本は変わらないままずっと一律の利益がでます。
例えば、100万円を5%の利率で10年間運用する場合を考えてみます。
単利の場合、1年目の利益は100万円×5%=5万円、2年目以降も5万円の利益が続き、
10年間で50万円の利益となります。
複利の場合、1年目は5万円、2年目は利益を元本にプラスして105万円×5%=5万2,500円、3年目は105万円の元本に5万2,500をプラスして110万2,500円×5%=5万5,125円となります。10年後は62万8,894円の利益となります。
単利と複利では同じ100万円の元本でも利益に約13万円の差が付きますね。ちなみに30年続けると、複利では約330万、単利では150万となんと180万円もの差が生まれます。
このように元本と利益がどんどん増え、長く運用するほど増え幅が大きくなっていくのが複利の効果です。
投資信託は再投資が簡単
投資において複利で運用するというのは、利益を再投資するということです。投資して増えた分を使ってしまわず、コツコツと再投資し続けるのが、投資の成功の秘訣と言えます。
投資信託における再投資は簡単です。投資信託を購入する際に「分配金なし」または「分配金再投資」を選ぶようにして、あとはほったらかしておけば利益が自動で再投資されます。(投資信託の利益を分配金といいます。)
いくら投資するか
何に投資するかも大事ですが、自分のお金の中からいくら投資するのかが一番大事です。
投資をしていることで不安になったりストレスを感じたりするのは本末転倒です。大きな金額投資するほど、何かあった時の動揺も大きくなるでしょう。生活に大きな影響を与えず、自分が安心していられる金額を投資するようにしましょう。
余剰資金
長期投資をしていれば大暴落を経験することになるかもしれません。投資している資産が大きなマイナスになっても生活に支障がないよう、しばらく使わないお金で投資するようにしましょう。目安として、15〜20年以上投資したまま引き出せないとしても支障はないか?と自問自答してみてください。
社会人になって、これからお金を貯めていくという人は、毎月の給料の中から少額ずつ積立投資するのがおすすめです。
まとまった貯金があって、その一部を投資しようという場合も、最低限の貯金を確保した上で、自分の年齢・家族構成・職業などから取れるリスクをしっかり考えて投資に回す金額を決めましょう。
最低限の貯金の確保
まず最低限の貯金を作ることを優先しましょう。投資は必ずリスクがあります。投資のリスクから生活を守るための貯金をしっかりしていきましょう。いくらくらい貯金があったら安心か、以下を参考に考えてみてください。
とりあえず少額からスタートしてみるのもあり
ネット銀行では100円から積立設定できることが多いです。あまり少額だと投資している効果があまりないですが、1000円〜3000円くらいなら、貯金もしながら無理なく投資できるのではないでしょうか。
貯金ができてきたら、投資に回す金額を増やしていきましょう。
資産全体からみたバランス
自分の持っている資産の全体を把握した上で、投資する金額を決めることも大事です。
銀行口座が複数ある場合は合計して今いくら現金があるのか、投資している金額が全体の何割に当たるのかと言った、全体的な視点も持ってみてください。
資産が減るリスクはどれくらい?
長期投資の目安となっている15年という数字は過去のデータから導き出したもので、今後も15年以上投資すれば絶対にマイナスにならないということではありません。
100年に一度と言われる世界的大暴落、1929年の世界恐慌では、米国のダウ平均株価はピーク時89%の下落をしています。株価は3年ほど下がり続け、元の水準に戻るのに25年かかりました。常に最悪の状況も想定しておきましょう。
最近の暴落を参考にしてみましょう。
過去の暴落
- 2000年のITバブル崩壊では最大64%下落、3年間下落
- 2007年のリーマンショックでは、62%下落、1年3ヶ月間下落
- 2020年コロナショックでは30%下落、1ヶ月間下落
過去の暴落を参考にすると、だいたい3年間最大60%くらい資産が減り続ける可能性は大いにあると想定しておきましょう。
投資の心構え
ここまで長期投資の基礎知識を学んできましたが、いかがでしたか?ぜひ、これらの知識を自分のものにして、安心できる投資生活を送ってほしいと思います。
最後に、私が投資をするときにいつも意識している心構えです。
- 投資に絶対はない
- 投資を過信しすぎない
- 最悪の事態も想定しておく
- 誰にでも当てはまる「答え」はない
- 自分を基準に考える(年齢・家族構成・職業・性格など)
いろいろな情報が溢れていますが、振り回されず自分の軸をしっかり持って投資をすることが大事だと思います!